企業価値を最大化するためのCRE戦略(企業不動産戦略)

日本人は不動産が好き?

2015.8.25

日本は島国で国土も狭く、その稀少性が日本人の不動産(特に土地)に対する伝統的な価値観を形成してきたことは、間違いありません。つまり、限りある不動産をみんなが欲しがることで、次第に日本の土地が価値付けされていき、ひいては不動産を重宝がる「日本人の精神性」が形づくられていった、ということです。当然のことながら、欲しい人が増えれば増えるほど、そのものの価値は高まっていきます。「日本人は不動産が好き」とよく言われますが、その背景を、歴史を遡って眺めていきましょう。

日本人は不動産が好き?

古代から現代まで、日本における「不動産(土地)」所有の歴史を振り返り

1縄文・弥生時代後の古墳時代、地方で豪族や貴族などが台頭していきますが、土地は自分たちの勢力・権勢が及ぶ範囲を示す、「縄張り」として捉えられていました。飛鳥時代の645年(孝徳天皇2年/大化2年)、「大化の改新」では、土地は「公地」であり、民は「公民」であることが謳われ、ここに天皇を中心とする中央集権国家が完成しました。奈良時代には、開墾した土地の永続的な私有を認める「墾田永年私財法」が発布され、貴族・豪族・有力寺社による土地の活用・開墾が促されることとなり、そうして「荘園」が誕生しました。

鎌倉時代に入ると、守護・地頭の力が強くなり、荘園の支配権を略奪するようになります。室町時代を経て戦国時代に入ると、自らの武力で支配権域の確保・拡大を図る者、すなわち戦国大名が現れます。1580年(天正 10年)、豊臣秀吉の太閤検地により、ついに荘園は消滅し、全国の土地と農民の支配を直接大名が行う制度が確立します。

260年も続いた江戸時代には、国の統治システムの基盤が整備されました。土地は武家・寺社が8割強を所有し、庶民による所有は2割弱に過ぎませんでした。人口の比率は半々であったため、庶民は狭い土地に密集することとなり、「長屋(賃貸住宅)」などに住んでいました。江戸は町人の街です。町人とは、都市部に居住する商人や職人の総称で、中には富裕層(豪商・富豪)と呼ばれる者もいました。彼らは豊富な資金を持ち、土地を保有していました。また、長屋の大家でもありました。

明治時代になると、土地の所有権が法的に証明され、地券が発行されたことにより、個人財産としての流動性も認められ、土地取引や担保融資が活発になりました。

昭和に入ると、農村の土地は一部の地主が牛耳り、そして、それらの土地を貧しい小作人が借りて耕作するという「地主制」によって、農村における社会関係が営まれていくことになります。しかし、終戦に伴い、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の指揮の下「農地改革」が行われ、農地の所有制度が一新。小作地が小作人に安値で売却されました。これにより、戦後日本の農村はほとんどが自作農となり、荘園制の成立から封建制、地主制への移行を経て、ついに「支配服従関係の伴う土地所有の時代」が終わりを告げたのです。

高度経済成長期の「土地神話」崩壊と、産声を上げる新しい価値観

戦後の日本は、高度経済成長に伴い、都市への人口流入が加速しました。法人は利益によって土地を購入し、オフィスビルや工場を建てていきました。銀行は不動産を担保に積極的に資金を貸し付け、それがさらに設備投資を促し、企業の業績は向上。これにより、労働者の所得も増加し、持ち家(マイホーム)を手に入れ、安定的な生活を実現しました。

不動産の価格は終始上がり続けていたため、土地を持っていれば、その価格は必ず上がるという「土地神話」が強く信じられていました。しかし、バブル崩壊により、不動産・土地の価格は下落が続き、不動産を担保としていた銀行には、不良債権が雪だるま式に膨れ上がり、ついには、金融機関が破綻するケースも出てきました。

このバブル崩壊による、長引く景気低迷によって、古くから信じられていた「土地神話」は崩壊。その結果、以下の新しい価値観が生まれました。

  • (1)土地価格はマーケットの状況により左右し、永遠には上がらないこと
  • (2)土地と建物を個別に見るのではなく、一体として捉え、収益性などに配慮して運営すべきこと

これらの新しい考え方は、実は欧米ではすでに定着した考え方だったのです。

証券化によって、ますます広がる不動産の市場!やっぱり日本人は不動産が好き

その後、2001年秋には、日本で初めて「J-REIT(Jリート/不動産投資信託)」が上場され、続いて、三井不動産や三菱地所などの大手ディベロッパーやゴールドマンサックスなどの金融会社が組成する「私募REIT」「私募ファンド」も立ち上がるなど、日本においても本格的な不動産投資市場がスタートしました。「J-REIT」も「私募ファンド」も収益用不動産を保有し、その収益の一部を投資家に分配する仕組みです。

「REIT」は1960年にアメリカで誕生しましたが、その設立の趣旨は、一部の富裕者・富裕会社が占有していた不動産を証券化の手法を通じて、もっと一般の人にも保有してもらいたい、というものでした。その後、「REIT」は1990年代、アメリカで急拡大し、今では世界最大規模の物流不動産ネットワークを築くに至っています。

不動産価格の上昇局面では、今後の値上がり期待などから、不動産を購入したいという人が増えますし、逆に不動産価格が下落すると、以前の水準との比較での割安感や、将来的な市況の回復期待などから、やはり、不動産を購入したいという需要は増えます。

このように、投資商品としての不動産証券化と、その市場の拡大によって、ますます、関心を集める「不動産」という資産。歴史的にも「富の象徴」としてその価値が認められてきた不動産は、現代であっても、やはり日本人にとって一大関心事であるようです。

不動産が好きなのは、もちろん、日本人だけに限った話ではありません。どの国も歴史を遡れば、領土争いの連続であり、そこでは、不動産、特に「土地」が常に深く関わっています。「土地」を多く支配する者が、政治や経済の覇権を握るということは、洋の東西を問わず同じことです。近代社会においては、会社が一等地に土地を保有し本社を構える、ということは大きなステータスであり、企業の価値向上・信用力のアップにもつながっていきます。

このように、昔も今も日本人が不動産好きなのは、国土が狭く、稀少性があるからといったことだけではなく、不動産に特別な想いや価値を感じ取っているからなのではないでしょうか。

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